エンタメ 千一夜物語

もの好きビルコンティが大好きな海外ドラマやバレエ、マンガ・アニメとエンタメもろもろ、ゴシップ話も交えて一人語り・・・

ロブ・スターク ナイーブな少年王に未来はない

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クリクリ巻毛に憂いを帯びた青い瞳、少し頼りなげな細身のリチャード・マッデン演じるロブ・スターク。相次ぐ不幸に襲われる健気な少年王は、放送当時お茶の間の女性達の母性愛に訴えかけて~~~、人気沸騰。

とはいえ、そんなキャラもサックリ殺してしまうゲームオブスローンズ。なんで彼は死ななくてはならなかったのか?今回は、その辺を掘ってみますかと・・・

 

  

 

望んで得たのではないない地位に悩む少年

ドラマ開始当時のロブの年齢は17歳。“北の守護者”スターク家の長男として兄弟たちと武術に励み、謹厳な父の背を見ながら成長していました。が、

 

・父ネッドが“王の手”として王都に召し出され、領主の役目を果たすことになってしまう。

・実弟ブランが大怪我に母親キャトリンは半狂乱で看病に明け暮れていたかと思うと、前“王の手”暗殺を知って王都に出かけてしまい、領主の重責も幼い三男リコンのケアもロブの責任になり~~~

・腹違いの“落し子”とはいえ、血と信頼の絆で結ばれた同い年のジョン・スノウはキャトリンにイビリ倒されて“冥夜の守人”になる決意をして”壁”へと旅立ってしまい~~

・そうこうしているうちにネッドが王都で反逆罪で捕らえられ、ロブは将として北の臣下達を従えて挙兵することになり~~~

・たまたま、有能な戦術家だったので連戦連勝。バラシオン家に反逆する“北の王”として推挙されてしまうのでした!

 

思いもよらいない急激な出世街道!

戦術に長けていれば戦さには勝てるけれども、戦略に優れなければ戦争には勝てない。そして、普仏戦争での勝利によりプロイセンが大英帝国の国益に抵触して第一次世界対戦で敗戦を喫するように、戦争に勝っても政治のカラクリに巧みでなければ勝利を維持できない。

 

戦略とカラクリは、10代の少年には無理な難題。それどころか、17歳の少年は臣下の生命を犠牲にしても勝ち続ける将としての責任の重さに混乱しているのです。

なので、“北の王”となったことを頂点にロブの運命は下降していかざるを得なかったのですね。

 

彼の判断間違いの数々は・・・

 

シオン・グレイジョイを信じた危うさ

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挙兵したロブの元に馳せ参じたのは、勇猛で名高い母方の叔父ブリンデン・ブラックフィッシュ、屈強なグレイトジョン・アンバーといった頼れる漢たち。とはいえ、母親もジョンもいなくなったロブの側に常にいたのは、戦時捕虜とはいえ、里子として共に育ったシオン。二人の関係はさらに密接になっていきます。

 

“北の王”ロブに忠誠を誓う諸侯の中でもシオンの言葉は熱い。

シオン: Am I your brother, now and always? 俺ってあなたの兄弟でしょう、今この時もいつでも

ロブ: Now and always. 今この時もいつでも

シオン: My sword is yours, in victory and defeat, from this day until my last day. 勝利でも敗戦でも俺の剣はあなたのもの、今日から俺の死ぬ日まで

シオンはロブに心酔している。この時、その言葉に嘘はない。alwaysを「いつまでも」と訳さないのは、「いつまでも」が別の人物のための言葉だから。セリフに被る悲愴なシオンのテーマ音楽。触れたら手が切れるように鮮烈な兄弟愛の誓いが悲劇に終わる予感・・・

 

シオンの熱い思いを信じるロブの気持ちは分かるけれども、彼の女癖の悪さや周囲への思いやりのなさを冷静に観察していれば、愛情に飢えて不安定、移り気でモラルに欠けた青年であることは明白。キャトリンの疑念は正しい。

 

「故郷のパイクに戻って父ベイロンから艦隊をだしてもらい、王都を一挙に攻めよう」という提言など宛にならい。こんな戦時捕虜を故郷に帰して、スターク家に恨みを募らせている父親と会って扇動されたら、どうなるかは予測できない。そこが分からない良い人ロブは、故郷に戻したシオンに裏切られて、居城ウィンターフェルを奪われ、不名誉な“城なき王”となってしまうのでした。

 

スターク一族って、本当に悲しいほど不器用です。  

 勝手に人質を逃がした母親にお咎めなし~~~?

 ネッドを処刑したジョフリー・バラシオン王の母方ラニスター家がロブ率いる北軍の敵。ジョフリーの実の父親で戦時捕虜のジェイミー・ラニスターをロブの母キャトリンが、敵方の人質となっている娘たちとの交換の約束をジェイミー本人と交して逃してしまったことは、キャトリンの回でお話しましたが・・・

 

これ、ジェイミーを和平交渉の切り札と考える王のロブに何の相談もなくやったんですね。ジェイミーに二人の息子を殺されたリカード・カースタークなど、ジェイミーの処刑を望んでいたのです。そんな中で、こんな身勝手、他の臣下がやったら反逆罪ですよ。母親でも、幽閉とか何らかの処置が必要ですよねえ、軍規を正す意味では・・・

ところが、良い人ロブ、何もしないで許してしまう。落とし前をつけられない奴なんです(汗)

 

リカード・カースタークを処刑するなんて!

怒りが収まらないリカード、やはり捕虜になっているラニスター血筋の少年達を殺害してしまいます。周囲の反対も聞かず、彼に対しては額面通り斬首刑を下すロブ。

 

なんか、やってることがチグハグなんですけど!!!母親はお咎めなしで戦功著しいリカード公は死刑?カースタークはスタークの分家で、北では大きな勢力を誇る一族。北軍からカースターク一族郎党は去り、彼らはスターク仇敵となることに。

ガックリと兵の数も減る北軍。こうなると、軍の統制は乱れて離散するのが定め・・・政治家としてはダメダメなロブ(汗)

 

ウォルダー・フレイを侮辱するとは!?

ラニスター陣営と戦うために渡らなければならいツインズの巨大な橋の持ち主、母方タリー家の家臣ではあるけれども、偏屈で奸智にたけたフレイ老。こういう奴を裏切ったら怖いです。

フレイ老の娘をロブの嫁にする約束で、キャトリンはツインズを渡らせてもらう約束をとりつけ、北郡はラニスターに連勝を始めるのですが・・・。戦場で負傷者の治療をするエキゾチックな美女タリサと恋に落ち、ロブは誓約を破ってしまいます。

自分の代わりに叔父エドミュアとフレイ家の縁組を進めた婚礼の席で、腹わたが煮えくり返ったフレイ老の一族に、妊娠しているタリサやキャトリンともどもロブは惨殺されてしまいます。これが、血みどろな「レッド・ウェディング」。ロブの亡骸は、愛狼グレイウィンドと頭を差し替えられ、さらし物として引き回されたり~~~。

悲惨なシーンでしたが、あまり驚かなかったビルコンティ。武士道的に考えても、「二言」は義・礼・忠・信の四項目違反。フレイ老の性格を考えると、起こるべくして怒った悲劇でした。

 

ルース・ボルトンの恐ろしさを知れ!!!

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掟破りな王への復讐とはいえ、ラニスターの後ろ盾なしにスタークを倒しても、ただの逆賊になってしまうフレイ一家。レッド・ウエディング虐殺の影、ラニスターとの連携で暗躍していたのは、北軍きっての冷静・沈着を誇る将ルース・ボルトン。北では、スターク家に次ぐ勢威を誇る一族の長。

ウエディング虐殺の時、「ラニスターからの挨拶がわり」の捨て台詞とともに、何本もの矢に射抜かれたロブの心臓に止めをさしたのもルース本人。

 

その前には、シオン・グレイジョイがウィンターフェルを簒奪、自分が戻って城を取り返すと逆上するロブに「ご心配なく。当家の落し子ラムジーに奪還の指揮を執らせますから」という恐るべき提案もしてました。これが本当の不運の始まり!

超絶サディストで策略家のラムジーから見ればシオンなど幼稚園級、サクッと倒して拷問しまくり、ウィンターフェルを焼き払い、城中皆殺し、スターク家の長女サンサを嫁にしては強姦しまくり、リコンをなぶり殺しと悪逆非道の限りを尽くすことになります。

 

生皮を剥いで逆さ磔にした男が旗印のボルトン家、ルースの冷血・非情ぶりは戦場でも随所に現れていました。それが見抜けなかったロブ、やはり滅びるしかなかったかと・・・

 

スターク家ならではの情弱に加えて、ナイーブで情に脆い三重苦を背負ったロブ。滅びるべくして滅びた人。ところで、

 

未熟で愚かだから早逝する若者達にはことかかないゲーム・オブ・スローンズの世界。

“若き狼”は、生き続けるにはあまりにも純粋。

全力疾走で短い人生を駆け抜けた、その輝きは眩しすぎました。

Valar Morghulis(人間は死すべきものである)

 

 

 

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